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Author:ロングテーラー
職業:会社員 家族:妻、子供(二人) 趣味:映画、小説、裁判
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| ロングテール研究所 誰も知らないお奨め映画『ロングテールムービー』を発掘する【ロングテール研究所】 |
ロングテール研究所では、採り上げる作品を以下の様にロングテール度とお奨め度の二つの指標で紹介しています。お奨めでない作品は、基本的に取り上げないつもりです。
ロングテール度:★(誰もが知っている)、★★(殆どの人が聞いたことがある)、★★★(聞いた事があるような・・・)、★★★★(知っている人はめったにいない)、★★★★★(誰も知らない) ・・・サンプルはこちら
お奨め度:★(もしご興味があれば)、★★(お奨め、でも人によっては・・・?)、★★★(観る価値あります)、★★★★(機会があれば是非!)、★★★★★(探してでも観て!)
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| 「オリエント急行殺人事件」 豪華絢爛の映像絵巻 |
アガサ・クリスティの有名な原作を映画化した「オリエント急行殺人事件」。最近、DVDで初めて観ました。
ロングテール度:★★★ お奨め度:★★★★
私はクリスティの小説が好きではないので、この映画も公開当時から存在は良く知っていたんですが、どうしても興味が湧かなくて観る気がしませんでした。どうもクリスティって、イギリスのお金持ちの貴族階級の間の浮世離れしたお話っていう感じで、しかも本格推理って、結末の謎解きまでひたすら関係者の話を探偵が聞き回るだけで、とにかく退屈っていうイメージが強かったのです。
そのうえ、原作小説を読んでいないにも係わらず、私は結末(種明かし)を知っていたのです。この原作小説は、本格推理における意外な犯人の一例として有名なのです。こうなっては、原作にも映画にも興味が湧くはずがありません。
でも、この映画を観た感想は、非常に面白かった。結末のネタがばれていた事なんて、小さな事でした。ちょっと他では観られないようなオールスターキャストに加え、舞台となるオリエント急行を始め、小道具や衣装など、とにかく豪華。思いっきり贅沢なフランス料理を腹いっぱい食べたような満足感を得られます。若い頃に見ていたら、これほど愉しめなかったかもしれません。
冒頭の有名スターが次々と登場しオリエント急行に乗り込むシーン、東ヨーロッパの田園風景を走るオリエント急行の映像など、贅沢な気分にひたりながら映画の中に入り込む愉しさに満ちています。ポワロを演じるアルバート・フィニーの、ちょっとやりすぎ感もある演技も愉快だし、アカデミー賞を受賞したイングリッド・バーグマンの演技も面白い。ジャクリーン・ビセットはとてもきれいです。その他、枚挙にいとまがありませんが、隅から隅まで名優に支えられている安心感はただ事ではありません。
ハリウッドの豪華な劇場を貸し切ったプレミア・ショーに、有名人たちが次々にリムジンで乗りつける。そんな環境で上映されるのがぴったりの映画だと思います。
意外だったのは、この映画の監督が社会派のシドニー・ルメットだったところ。もっとも脂の乗り切った時期の作品で、この映画の前後では、「セルピコ」や「狼たちの午後」を撮っています。ルメットの作風からいって、全然見当はずれとも思える娯楽作品ですが、見事に豪華なフルコースを料理しています。
 
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| 「鉄塔武蔵野線」 こんな小説あるの! |
銀林みのる著、「鉄塔武蔵野線」。第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作です。 鉄塔ものというジャンルを開拓したとまで云われる怪作。しかし、そのジャンルで続く作品はまだ現われません。
ロングテール度:★★★★ お奨め度:★★★
武蔵野線といっても、東京の外縁を四時間かけて週るJRの電車ではありません。武蔵野線とは、高圧線の鉄塔のこと。夏休みのある日、5年生の美晴は、近所の鉄塔に「武蔵野線75−1」という票が付いているのを発見します。ひとつ隣の鉄塔は「76」。反対側の隣の鉄塔は「74」。この大発見に胸を躍らせた美晴は、2歳下のアキラと自転車に乗って、武蔵野線を辿る冒険旅行に出発します。鉄塔を順番に辿って「1」まで行く。そして「1」番鉄塔の地下には原子力発電所があるはずだ、と。
誰にでも憶えるのある、夏休みのあの日を思い出す、素晴らしいファンタジーです。
美晴とアキラは、鉄塔をひとつ辿るごとに、その鉄塔の脚で囲まれた四角い接地面の「結界」に入り、その中心に宝物である酒蓋(日本酒の壜の蓋のこと)をひとつずつ埋めていきます。
いつの間にか近所を離れ、知らない町に入るふたり。鉄塔に対する美晴のうんちくが、とても面白いです。「男鉄塔」「女鉄塔」「姐ちゃん鉄塔」「ばあちゃん鉄塔」などと、鉄塔の特徴をとらえてカテゴライズしていきます。鉄塔「武蔵野線」は実在する東京電力の送電線で、埼玉県新座市から東京の西東京市(保谷市)を結びます。この小説には、美晴とアキラが眼にする全ての鉄塔の写真が掲載されており、「オオ、これが女鉄塔か」と小学生の二人といっしょになって愉しむ事ができます。
やがてアキラとも別れひとりになり、ついに一夜を明かし、川を超える美晴。1番鉄塔がいよいよ近くなる。そんな美晴の背後には、鉄塔警察の手が…。
「鉄塔武蔵野線」がファンタジー大賞を取ったときの模様が、「文学賞メッタ斬り!」に紹介されていました。なかなか笑えます。
★ 「鉄塔武蔵野線」は映画化されました。私は見た事ないのですが、一度見てみたいと思っています。
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| 「渚にて」 静かに訪れる人類最後の日 |
ネビル・シュートの「渚にて」。SF小説の古典です。グレゴリー・ペック主演で映画化もされています。 この小説の存在は、中学の頃から知っていましたが、今になってようやく読んだものです。
ロングテール度:★★★ お奨め度:★
いわゆる人類破滅物のSFです。SFのベストテンなどにも選ばれるような有名な小説ですね。ですが、その読後の味わいは、ふつうに言われるSFとはかなり異なるのではないでしょうか。すくなくとも、私にはかなり意外感がありました。
この小説がユニークなのは、破滅物のSFといわれて想像するような場面がいっさいないことです。パニックもなければ、大騒ぎもない。普通のSFだったら派手な見せ場となるようなシーンがいっさいありません。物語はつねに坦々と日常生活を追うだけです。オーストラリアのメルボルンに生き残った人々は、やがて最期の日が来る事が分かっていても、とりたてて怯える事もなく、日常の生活を静かに続けようとします。自分が見る事はないと分かっていても、来年咲く花を場に植え、手入れを続ける主婦。フェラーリでの自動車レースに打ち込む科学者など、全ての登場人物が覚悟をもって、最期の日までの残された日々を過ごそうとします。声高に嘆きの声を上げるものなど皆無なのです。
それだけに最期の日を迎えるシーンが、静かな感動を呼ぶのでしょう。赤ちゃんを囲んで最期の時を迎えようとする夫婦や、恋人の乗る潜水艦を静かに見送る女性のシーンなどは、つい涙ぐんでしまいます。
優れた小説ではあるのですが、現代の読者からすると、この何も起らない破滅小説は退屈を感じるというのも事実だと思うのですがどうでしょうか。正直、私は読んでいて、もうすぐ何かが起るはずだという期待を何度も感じていました。そして、最期のページまで残り少なくなってはじめて、ああ、これはそういう小説だったんだと思いました。
「渚にて」という題名が好きです。中学の頃から、こんな題名のSF小説ってどんな内容だろうとずっと思っていました。
 
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| 「隣の家の少女」 読んだらきっと後悔します! |
ジャック・ケッチャムの代表作。「隣の家の少女」
ロングテール度:★★★ お奨め度:★★★★
お奨め度が★四つだからといって、うかつに手を出さないでくださいね。読んだら絶対後悔します。請合います。本当は★五つでもいいんですが、そんな意味で一つマイナスしました(そんなのばっかり!)。
アマゾンの読者の書評欄などを見ると、あれだけ警告されているにも係わらずこの本に手を出してしまった人たちの慟哭の声が連なっています。まさに死屍累々ですね。
ジャック・ケッチャム。読んだのは三作だけですが、どれも素晴らしいです。スティーブン・キングと同じくらい素晴らしい小説です。(だけど、書いていい事と悪い事がありますよね、たぶん)内容が内容だけに、次から次へとうかつに手を出せない作家です。まだ読んでいない作品はたくさんあるので、その意味ではうれしいんですが、読むときは心して掛からねばなりません。
また、扶桑社ミステリー文庫の表紙が素晴らしいです。この作品といい、「オフシーズン」といい、あの表紙をみて、(あと「隣の家の少女」という題名をみて)誰がこの内容を想像するでしょうか?だけど、読み終った後で、しげしげとこのシンプルで物悲しいデザインの表紙を見てみると、なんだかしっくりくるので不思議です。あの「オフシーズン」でさえ、なんとも美しい表紙が映えて見えるのですよね。
「隣の家の少女」を読んだときから、ほんとうは誰かにこの本を読ませてみたくてしかたないのです。そしてその人がどうなるのか観察してみたい。さすがに出来ませんけどね。読書好きの友人に、何にも言わずにこの本を薦めたらどうなるでしょうか。次に会った時、口きいてもらえるか心配です。
巻末に、スティーブン・キングの長い解説が付いています。あいかららず、やや饒舌に、興奮気味にケッチャムのすばらしさ(キングの言うところの素晴らしさです、あくまでも)を訴えています。ジャック・ケッチャムといい、ジム・トンプソンといい、キングのほめる作品は凄いのが多いです。そしてとっても毒があって、悪趣味です。わたしは大好きですが・・・。
 
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| 「レッドドラゴン」 レクター博士が登場する最初の事件 |
「レッドドラゴン」は、トマス・ハリスの原作、はじめてハンニバル・レクター博士が人々の前に登場したミステリーです。この作品を原作とした映画は二本あり、一つはマイケル・マン監督の「刑事グラハム 凍りついた欲望」、もう一つがブレット・ラトナー監督の「レッドドラゴン」です。後者は有名ですが、前者はほとんど知られていないと思います。
まず前者ですが、「刑事グラハム」というタイトルからして脱力です。まず主人公の名前はグラハムではなくグレアム。そして刑事ではなく、FBIの特別調査官(捜査官ではない)という二重のミスをおかしています。このタイトルを付けた日本の配給会社、この作品を売ろうという気がまったくなかった事がわかります。「刑事グラハム」が公開されたのが、「羊たちの沈黙」が公開される四年前にあたる1988年である事を考えるとしかたないかもしれません。当時、この映画に脇役で出てくるレクター博士なる人物(登場シーンは短い)が、これほどの有名人になるとは誰も思わなかったにちがいありません。
とはいえ、この「刑事グラハム」は、それほど悪い作品ではありません。地味ではありますが、この特異な作品をうまく映画化していると思います。
対して、「レッドドラゴン」は2003年の作品。アンソニー・ホプキンスのレクター博士で売り出そうとしているのが見え見えです。原作小説と比べても、レクター博士の出番が倍くらい大きくなっています。
ですが、この作品では、グレアム役にエドワード・ノートン、犯人のダラハイド役にレイフ・ファインズというクセのある俳優を揃えることで、レクター以外のドラマの部分もそれなりに良く出来ています。内容は原作にほぼ忠実で、長い原作を巧く整理してまとめていることが分かります。ラストシーンが原作とは少し異なりますが、ひねりを効かせた分、原作よりも面白いエンディングになったと思います。
私がトマス・ハリス原作の「レッドドラゴン」を読んだのは、1985年ごろだと思います。日本で原作の翻訳がハードカバーで出たときに読みました。やはり、脇役であるレクター博士の存在感が圧倒的で、作品全体の印象はうすれても、ハンニバル・レクターはよく憶えていました。
作品全体としてはというと、あまり印象に残ってはいませんでした。それだけに「羊たちに沈黙」があれだけヒットしたのには、意外な思いが強かったです。「レッドドラゴン」「羊たちの沈黙」というと、異常心理物の代表作のように言われるのですが、なぜこの作品だけが特別に取り上げられるのかという疑問も少し感じます。異常者による連続殺人事件を捜査官が追跡するという図式では、ローレンス・サンダースの「魔性の殺人」というすごい傑作があるのに、こちらは話題にもならないで絶版になってしまうというのにも疑問を感じます。
とはいえ、「レッドドラゴン」「羊たちの沈黙」までなら、映画、小説ともに満足のいく作品ではないかと思っています。
ロングテール度:★★ お奨め度:★★
* 「刑事グラハム」は、「レクター博士の沈黙」という題でDVD化されています。
 
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