スティーブン・キング原作のベストセラー小説を、デビッド・クローネンバーグが監督した作品。この作品に限っては、いつものクローネンバーグ節はなりを潜め、グロイ描写はありません。超能力を持ってしまった青年の悲劇を、静かに丁寧に描写し、何とも言えない味わいを残してくれます。
ロングテール度:★★★ お奨め度:★★★★
スティーブン・キングの最も脂の乗り切った時代の小説です。サイズ的にもコンパクトで、読んだ人、誰をも夢中にさせるような愛すべき小説です。この時代のキングの小説は、どれも本当に素晴らしい。
クリストファー・ウォーケン演じる、田舎町の青年教師ジョン・スミス。名前のとおり、平凡で愛すべき青年です。結婚間近の婚約者もいます。その青年に、悲劇が襲い掛かります。突然の交通事故で入院。辛うじて命は取りとめたものの、昏睡状態が五年も続くのです。
五年の昏睡の後に覚醒たジョンの世界は、全てが変わってしまいました。婚約者は、すでに他の男と結婚。ジョンの事故が原因で、両親も少し変な具合になってしまいます。そのうえ、ジョンには、手に触れた他人の過去や未来を透視する能力が身についてしまったのです。屈託の無かったジョンの顔には、次第に陰がさす様になります。
やがてジョンは、自分の超能力を使って、人助けをするようになります。
ジョンの住む町で発生した、女子大生連続殺人事件の捜査に協力することになりますが、事件の捜査の中で、ジョン自らも負傷を負ってしまいます。
クリストファー・ウォーケンが、平凡で哀しい、愛すべき青年をとても良く演じています。とくに、他人の妻になった、かつての婚約者が訪ねてくる場面は心に残ります。互いにどうする事もできない事を確認しあった、かつての恋人たちが別れる時。彼女を玄関から優しく送り出したジョンは、玄関の扉をそっと閉めた後、その扉にもたれかかって声も無く哭くのです。クリストファー・ウォーケンならではの、とても絵になる美しいシーンです。
やがてスティルソンという、大統領候補が国中を席巻するようになり、ジョンの町でも演説を行うことになります。なんとスティルソンの選挙活動には、ジョンのかつての恋人が加わっているのです。そして、演説に来たスティルソンと握手をした瞬間、超能力はジョンに全てを伝えてしまいます。
人間には知ることの出来ない未来を、望んだわけでもないのに知ってしまったジョンは、ついにある決心をするのです。
映画も小説も両方すばらしいです。映画はクリストファー・ウォーケンの演技と、全編を通して寒々しい、冷たいトーンが秀抜。小説は、映画には入れられなかった、細かいエピソードを愉しむ事ができます。ぜひ両方とも味わっていただきたいです。
 
この作品を基にした、テレビの人気シリーズもあります。
テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌
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