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Author:ロングテーラー
職業:会社員 家族:妻、子供(二人) 趣味:映画、小説、裁判
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| 「爆発の臨界」 田中光二の懐かしい国産冒険小説 |
今日、本屋を覗くと、文庫本の古書がならんでいました。その中で見つけたのが、田中光二さんのいくつかの作品でした。なつかしくて、「大いなる逃亡」「失われたものの伝説」を買ってしまいました。いちばん欲しかった「白熱:デッドヒート」は残念ながら見つけられませんでした。今回は、昔読んだ「爆発の臨界」を紹介しようと思います。
「爆発の臨界」は、田中光二さんの冒険小説です。国産冒険小説の走りのような作品です。読んだのは三十年ちかく前でしょうか。今、手に入れるのは難しいかもしれません。
ロングテール度:★★★★★ お奨め度:★★★
当時の日本には、まだ冒険小説というジャンルが確立されていなくて、スケールの大きいエンターテインメント小説を読むには、海外の翻訳本を猟らなければならない状況でした。
そんな中、数少ない冒険小説を書いていたのが、若きSF作家だった田中光二さん。SF出身だけあって、着想が非凡でスケールの大きいエンターテインメントを書いてくれていました。「爆発の臨界」は、代表作のひとつでしょう。「東京湾炎上」というタイトルで映画化もされました。今読んでも十分に通用する作品と思います。いや、むしろ時代を先取りしすぎた作品だったかもしれません。
石油を満載したタンカーが、東京湾のど真ん中でテロリストにシージャックされるというのがメインストーリー。彼らは、鹿児島の石油基地を爆破するよう政府を脅迫する。従わない場合は、東京湾の真ん中でタンカーを爆破するという。生態系が破壊され、湾岸一帯が死の街となる。
数年後になって、フレデリック・フォーサイスが「悪魔の選択」で、石油タンカーのシージャックを扱いましたが、先に「爆発の臨界」を読んでいた私には、なんだか二番煎じくさく感じられてしょうがなかった。面白さも迫力も「爆発の臨界」の方が勝っていたと思います。田中さんは、もし東京湾の真ん中で石油タンカーが爆破されたらどうなるかという詳細なシミュレーションを小説の中で展開してくれました。当時、エコロジー的な発想はまだあまりなかったので、そのシミュレーションの迫力には圧倒されたものでした。
この小説、力で押し切るだけじゃなく、着想にもいろいろ面白い点があります。シージャックに対抗する政府は、なんと映画の特撮マンを集めて、特撮を使ったニュースの実況中継を行い、テロリストを瞞そうとするのです。現実味があるかどうかは別として、サスペンスもあるし、小説としてはとても面白かったです。
さらにクライマックスとして、田中さんは、タンカーの石油槽の底に落下した時限爆弾を、潜水服に身を包んだ主人公が回収に行くというシーンを用意しています。いつ爆発するか分からない爆弾を探しに、まっ黒な石油の海にダイブする主人公。こんな、オリジナルで恐ろしいクライマックスは読んだ事がありません。自身の恐怖と闘いながら、石油の海を降下して行く主人公とともにハラハラする、まさに冒険小説らしいクライマックス。至高の読書体験でした。
 
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