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企業小説としての「鷲は舞い降りた」http://longtailer.blog96.fc2.com/blog-entry-91.html">企業小説としての「鷲は舞い降りた」
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企業小説としての「鷲は舞い降りた」
冒険小説の傑作「鷲は舞い降りた」。 ジャック・ヒギンズを世界的なベストセラー作家に押し上げた、名作中の名作。 非常に有名な作品です。

「鷲は舞い降りた」といえば、(いつもなら悪役の)ドイツ軍人をヒーローとした小説であるとか、クルト・シュタイナ、リーアム・デブリンなどの個性のある登場人物像、そしておなじみの雨、教会、ナチス、アイルランドなどのガジェットが有名ですが、ここではちょっと変わった視点から、この名作を振り返って見たいと思います。

じつは私がこの小説で面白かったのが、企業小説、組織小説としての側面なのです。

この小説で描かれた鷲作戦、もとはといえば、ヒトラーが漏らした何気ない一言から始まっています。
第二次世界大戦末期、追詰められたナチス・ドイツ。 正気を失ったヒトラーの馬鹿げた思いつきに過ぎないひとこと。 それも言った本人ですら、一晩寝たら忘れてしまうような、放言がすべての始まりでした。

「レンジャー部隊をイギリスに潜入させ、ウィンストン・チャーチルを誘拐して来い」というのがそれ。

不可能も不可能。ありえない作戦です。そのうえ、万一成功したとしても、何の利益ももたらさないただの暴挙。そう、ヒトラーの狂ったエゴを満足させる以外には…。

誰もが、内心ハア?と言って脱力したはず。 本来なら、「何考えてんですか、総統?」と誰かが突っ込みを入れなければいけないところでした。

ところがそうならないんですよね、組織っていうものは。

本来なら有耶無耶のうちに忘れ去られるひと言だったはず。 ところが、組織内での政治力学や、偶然の出来事などにより、それが勝手に一人歩きを始めるのです。 取巻きの中で唯一、理性的な判断ができるカナリス提督に、この作戦の責任が押し付けられます。 とりあえず、形だけ整えて、努力したけどやっぱり不可能でしたというところに落とし込もうとするカナリス。 健全な判断だと思います。 しかし狂った運命はそれを許さなかった。 偶然の出来事に支えられながら、この馬鹿げた作戦はどんどん巨大なモンスターに成長し、もはや誰も止めることが出来なくなってしまうのです。

このあたり、組織に身を置くものとしては、怖くてたまりません。 身につまされるとはこのことです。 本当にありますよねこういうこと。 一人一人は理性的でも、集団になるとどうしてこうなってしまうのでしょうか。 おい、誰か止めろよってみんなで思っているうちに誰にもどうする事も出来なくなってしまうのです。

この狂気の鷲作戦は、動き出したら止まりません。周りの人を次々に巻き込んで、まるで台風のようです。 高潔で純粋な心を持った人ほど巻き込まれていきます。

この小説のヒーロー、クルト・シュタイナ中佐は、まさにそんな人物。ドイツ軍人でありながら、SSからユダヤ人の少女を守ったりします。

「あなたを見て私が何を思い出したかおわかりか?どぶのなかで時折靴にくっつくものだ。暑い日にはとくに不快なものだ」

動き出した作戦が、漫画的で馬鹿げていればいるほど、巻き込まれた人々の悲劇性や神話性がひきたってきます。 誰もがうまくいくはずがないと思っていながら、作戦はどんどん進んでいってしまいます。 人々が信じられない思いに打ちのめされ、でもひょっとしたら巧くいくのかもと思いかけた瞬間、ついに彼らを悲劇が襲います。 旧い教会に立てこもり、絶望的な戦いを余儀なくされる主人公たち。

そしてこの馬鹿げた作戦の末路には、ある意味それにふさわしい、さらに馬鹿げた結末が待っています。 この結末により、悲劇的に死んでいった登場人物たちの行動の神話性が、さらに決定的なものとなります。

ロングテール度:★
お奨め度:★★★★




この悲劇の物語を読者として読むのは大歓迎だけど、こんな事には、死んでも巻き込まれたくないぞ。
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